第5章:不協和音

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3:パートナーシグニが個性を引き立てる

時を巻き戻して2020年12月。ディーセレの開幕と共に無くなった要素のひとつに「限定条件」があった。シグニやスペル、アーツなどに記載された「タマ限定」「花代限定」といった記述で、場のルリグがそのルリグタイプを持っていなければ、そのカードを使用できないという制約だ(デッキには入れられる)。

限定条件があることでルリグやデッキの個性は際立っていたし、ルリグごとのゲーム体験が更にユニークになっていた。その一方、強化の順番待ちが非常に長かったり、使えるカードに制約がありすぎるというデメリットもあった。1弾につき多くて100種類のカードしか収録できず、SRやLRの枠も考えると、50種類近くあるルリグタイプの新カードを毎回出し続けるのは現実的ではなく、ルリグ人気ごとにパックごとの売り上げが上下しすぎるのは、恐らく商業的な観点からも、好ましいことではないだろう。

そんな限定条件がディーセレで廃止されたことで、パックが登場するたびに自分のデッキを強化できるようになった。色さえ同じであれば強化の機会になるし、その色の制約も2月になくなったため、自分のデッキが毎弾何らかの強化を受けられるのでは、という期待があった。

一方、似通ったカードばかりがメインデッキに採用され、ルリグごとの個性が失われがちになったというデメリットもあるだろう。例えば、白は《エクシア》《ゲイヴォルグ》《リメンバ//メモリア》ばかり、黒は《ファラリス》《ミュウ//メモリア》ばかりで、これらをメインデッキに厚く採用すれば、センタールリグが同じ白のリメンバでもサシェでも、おおよそのゲーム体験は近くなる。カードパワーの差こそあれど、結局は強いカードばかりが出ずっぱりになっていったのだのが、ここまでのディーセレだった。

そんな中、今弾から登場した新要素のひとつが「パートナーシグニ」だ。特定のセンタールリグが――主にレベル3ルリグだが――場にいることで発揮する能力を持った、レベル3のシグニの総称だ。「限定条件」と異なり、そのセンタールリグが場にいなくとも場に出せるシグニではあるが、特定のルリグ名のカードがいることで使える能力を持っており、その性能が非常に高いのが特徴だ。

そのうえで、その能力が非常に個性的で、例えば《みこみこ☆さんさんまぜまぜ》のパートナーシグニ《羅菌姫 ミコオシ//ディソナ》は「相手に『みこみこ親衛隊』を押し付ける」という、そのルリグだからこそのデザインが目立っている。フレーバーとしてもディソナ編では「パートナーシグニはルリグの願望が具現化した存在」と描かれているだけあって、パートナーシグニはルリグの個性を強烈に引き立てる存在だったのだ。

ディソナ編で登場したセンタールリグは、次弾の「CONCORD DIVA」を含めると、「マユ」を除いて10種類。全てのルリグでメインデッキのほとんどがディソナカードで構築されているため、ゲーム体験は近しくなりそうに思えるし、実際「《バクチク//ディソナ》などで全面除去してアタック!」という流れはおおよそ同じだったが、それぞれのルリグとデッキの個性が保たれていたのは、センタールリグに加えてパートナーシグニが存在していたからといえるだろう。例えば、後に登場する【不穏ナナシ】と【ディソナピルルク】は、共にハンデスを重視するディソナデッキではあるが、センタールリグと、それぞれのパートナーシグニである《羅菌姫 ヘドニム//ディソナ》と《コードハート セイヴ//ディソナ》の存在とその個性が、異なるゲーム体験をもたらしていたように思う。

パートナーシグニのシステムはこの後にも継続され、ルリグやデッキの個性を色濃く打ち出していたし、後にメタゲームを支配した【ひとえ】の《ジャックビーンズ》や【あきら】の《ボールペンマワシ》などからわかるように、そのルリグを象徴する存在として共に語られることになっていった。

さて、本題。「DISSONANCE DIVA」で登場したルリグは、どれも濃淡こそあれどメタゲームで活躍した。全てを取り上げると文字がどれだけあっても足りず、冗長になってしまうため、ピックアップして語っていこうと思う。

まずは《みこみこ☆さんさんまぜまぜ》から。ディソナ環境を通してトップメタに立ち続けたと評価されており、これまでの青ルリグとは打って変わって、ディソナの火力を武器にしたハンデス系デッキだ。従来の【ノンストップタマゴ】【青白あや】【ハンデスリメンバ】とは異なり、除去とハンデスを兼ね備えたビートダウンデッキとして、メタゲームに打って出た。

この時代のアシストルリグ構成は「マドカ+マキナ」や「マドカ+エクス」など、「青青黒」「青青赤」が主流。ピースには《サマーライフブルース》と、同弾で登場した《UNKNOWN MEMORY》を採用し、ルリグデッキでシグニを除去し、《みこみこ☆さんさんまぜまぜ》やパートナーシグニの《羅菌姫 ミコオシ//ディソナ》で、攻めながらハンデスする戦術を得意としていた。これまでのハンデスデッキに匹敵するハンデス性能を持ちながら、ディソナの高性能の打点で殴ってくるみこみこは、まさに新時代のデッキだ。「ハンデス+ビートダウン」というよりは「ビートダウン+ハンデス」の側面が強く、過去のハンデスデッキを打点で置き去りにしていた。

この【ディソナみこみこ】は「ハンデスして殴る」を一本軸に、今後メタゲームで長く生き残ることとなる。次弾でドリームチームピース《不穏☆FU☆ON!!》が登場すると、火力やハンデスの安定感にさらに磨きがかかり、ディソナ環境を象徴するルリグとして語られることとなっていった。

続いては《炎妖舞 花代・惨》だ。

ただでさえ火力が高いディソナにおいて、更に火力に磨きをかけたセンタールリグ。起動能力による手札交換ないしエナ加速と、アタックフェイズ開始時の【ダブルクラッシュ】または【アサシン】付与は、ディソナデッキの中でも非常に攻撃的な性能だ。特にアタックフェイズ開始時の自動能力の安定感が高く、どんな状況からでもライフクロスを刈り取ってくる姿は、ディソナの火力を象徴している。実質のゲーム1能力であるエクシード4の起動能力は、シンプルなライフクロスクラッシュ。この「ご挨拶」も火力上昇に一役買っていた。

パートナーシグニの《羅輝石 シークラ//ディソナ》は意外にも除去能力を持たなかったが、エナ破壊の要素を持つ点が、バニッシュ主体のセンタールリグと相性が良かった。エナをわずかに奪うだけでも、《メル=インビジブル》などの大型アシストルリグに必要なエナを足りなくさせるため相手にとっては厄介で、同弾のピース《アンバランス・ダンス》はもちろん、後に登場する《幻水姫 アキノ//ディソナ》や《CONNECTスピニング》などと合わせ、エナ破壊に特化した戦術を取ることも可能にした。リソースを伸ばすライフバーストも燃費の悪い花代にとっては嬉しく、まさに「パートナー」として、ルリグを支えていた。

さて、火力火力と語られてばかりであるが、ディソナの中にもコントロール重視のデッキはいた。それが《未知の巫女 ユキ》だ。ルリグタイプはイオナであるが、色も装いも全く新たになったルリグである。ディソナの中では唯一コントロールに特化した、長期戦を得意とするルリグだ。

バリアもここで初登場

パートナーシグニの《コードラビリンス コネクト//ディソナ》と合わせて、相手のシグニをどんどんデッキの一番下に送り込み、じわじわとリソースを奪っていく戦略が武器だ。同時に登場した《イシガメ//ディソナ》や《EXTRA》と併用して手札も奪ったり、《ナナシ・ご選択》で柔軟に戦ったりと、後に登場する【防衛派】を思わせる戦術が、コントロール好きなプレイヤーを魅了した。《蒼黒GAIA》までもが採用されていたのだから驚きである。

大火力時代であるディソナでユキが戦い抜けていたのは、エクシード4、及びピース《黒点の記憶》で得られる【ルリグバリア】【シグニバリア】が大きかった。消費することでルリグ、及びシグニからのダメージを無効にできるバリアであり、この弾から初めて登場した新要素。《黒点の記憶》でそれぞれ1枚、ユキのエクシード4で【シグニバリア】を1枚と、計3枚のバリアを得られたため、往年のデッキの中でも圧倒的に長期戦を得意としていた。
バリアを得ることでアシストルリグを軽量にでき、早々にリミット8を作って盤面で戦っていくこともできた。《中装 ギロチン//ディソナ》でシグニのパワーラインを高めたり、《中罠 ゆかゆか//ディソナ》でサーバントを回収したりと、長期戦に必要な要素も勢ぞろい。これまでのサシェやリメンバの理念を受け継いだ、新時代のコントロールデッキとなっていった。

高パワーは正義
23/04/15 193大須店優勝 ペンギン選手(大会結果ページ)

だがそんなユキであっても、ディソナの火力を受け止めるのは難儀していた。いわんやこれまでのコントロールの象徴だった、《聖天姫 エクシア》たちでも、だ。そうなってしまった原因は多々あるが、このシグニの存在が圧倒的に大きかった。それが《翠魔姫 バン//ディソナ》だ。

2エナを支払って発動する起動能力で、「対戦相手はパワー10000以上のシグニを1体エナゾーンに置く」を行う。一見ただの除去能力だが、対戦相手が自らの手で、自分のシグニ1体をエナに置くため、《エクシア》のアタック封じを発動させずに除去できた。

《エクシア》の自動能力を発動させずに処理できる、という1点だけでも《バン//ディソナ》は非常に強力であるが、それ以上に「2エナでパワー10000以上のシグニを除去できる」というだけで、エナコストと比べてもコスパがかなりよい。緑エナはディソナであれば自然に入る《アイビー//ディソナ》で工面できるため、支払いに困ることもあまりなく、あらゆるディソナデッキに採用され始めた。除去するシグニは相手が選ぶが、そんなことは些末だった。

《バン//ディソナ》自身がパワー上昇と【シャドウ(レベル3)】も得られるため、レベル3シグニのライフバーストを貫通したりするなど、八面六臂の活躍を見せた。除去のエナコストがディソナではなく「緑1無色1」のエナコストだったことから、後に非ディソナの緑デッキでも出番があり、長く愛されるシグニとなっていった。

《バン//ディソナ》の登場で、「エクシア神話」は崩壊した。崩壊こそしたが、《エクシア》をすんなりと除去できるのは《バン//ディソナ》程度だけだったので、《エクシア》の強さはさほど変わっていない。しかし、場に出せば1面防御がほぼ担保されていた《エクシア》に、明確な「天敵」が登場したのは、大きな歴史の転換点となったのだ。
無論、《バン//ディソナ》が除去できたのは《エクシア》だけではない。【シャドウ】を持った厄介なシグニ――それこそ《バン//ディソナ》であったり、各種パートナーシグニであったりと、エースアタッカーを2エナで除去できるようになったのだ。起動能力ゆえ《コードハート リメンバ//メモリア》で負担をかけたり、パワーの低いシグニを並べて対策したりもできたが、《コードハート リメンバ//メモリア》はパワーが上がった《バン//ディソナ》にバトルでバニッシュされ、パワーを下げると《バクチク//ディソナ》たちの餌食になるなど、シグニだけでディソナの火力を防ぎきるのは難しかった。

他にも優秀なレベル3「ディソナ」シグニが登場している。手札交換の《羅星姫 タマゴ//ディソナ》やランダムハンデスの《幻蟲姫 アロス・ピルルク//ディソナ》、連続ルリグアタックを可能にする《幻怪姫 ドーナ//ディソナ》などなど、選択肢は非常に豊富だった。そしてそれらが皆「ディソナ」を持っていたため、サーチやサルベージ手が非常に豊富であり、また「ディソナ」を支払うためのコストに充てることもできた。登場からわずか1弾のカードプールでありながら、厳選されたエリート揃いのシグニやルリグで、ディソナは一気に時代の主役になったのだ。

さて、メタゲームのリトマス紙といえば大型大会だろう。「DISSONANCE DIVA」の発売から2週間後の2月末、3人チーム戦「ディソナ祭」が東京で開催された。
コロナ禍を経て初めての公式チーム戦。その上位入賞デッキは、まさにメタゲームの過渡期を示すものだった。

上位5チーム15人のうち、ディソナ系はみこみこ3、メル2、花代2、黒タマ2の9人、青白系がサシェ3、リメンバ2の5人、そして「バーチャル」からアンジュが1人という分布となったし、6位以下で5勝1敗のチームが使用したデッキの多くがディソナ系だったことからも、ディソナが主流になりつつあることがよく分かる。
アシストルリグの構成は個人差が見られた。3人のみこみこを見ても、1人は「ゆかゆか+マドカ」「エクス+マドカ」「エクス+マドカ」とバラバラで、そして5勝1敗のみこみこは「リル+マドカ」「レイ+マドカ」「ゆかゆか+マドカ」と、構成は様々だった。全員が「青青+α」で、マドカの皆勤賞ぶりには驚かされるばかりだが、もう1人のアシストルリグが「ゆかゆか」「レイ」「エクス」「リル」と様々で、模索が続いている様子が見て取れる。

このディソナ環境から使われ始めたアシストルリグがエクス、特に4弾で登場していた《エクスクロスファイア》だ。

バニッシュはパワーを問わない

相手のシグニ1体と同じ枚数のカードをエナからトラッシュに置くことでそれをバニッシュしつつ、相手のエナゾーンから、センタールリグと異なる2枚までをトラッシュに置ける出現時能力を持つ。後者のエナ破壊はカードの色が散りがちなディソナ環境で特に有用で、この頃から一気に注目度を上げ始めてきた。グロウコストが0であり、自分のエナの状況によって支払う枚数を調整できる小回りの良さも評価ポイントだった。

レベル1のアシストルリグとしては、「ディソナ祭」では1面バニッシュの《エクスゲイザー》の採用も多かったが、ドローができる《エクスエコー》が、徐々に主流となっていく。

赤のカード1枚を捨てて3ドローができる、言ってしまえば《マドカ//フロート》の下位互換に近い能力だが、ディソナデッキではほぼ確実に採用される《バクチク//ディソナ》や《開園の合図》をコストに手札交換ができる点で、大いに評価された。加えて、このカードがエクシードのコストでトラッシュに置かれた際に発動する能力を、センタールリグのゲーム1が「エクシード4」になったことから活用できるようになったのも沖畔だった。アシストルリグとして高い採用率を誇ったマキナ、デウスにエクスも仲間入りし、DXMはアシストルリグとしても最強格であることが証明された。

「ディソナ祭」ではビートダウンキラーのサシェの活躍も目立ち、リメンバも従来型の青黒系デッキとしてディソナの火力を受け止める、「ビートダウンVSコントロール」の様相にもなっていた。
どちらにも属しない唯一のルリグであるアンジュの構築は、《ウルトラスーパーヒーローズ》《GO TO theTOP!》でエナ破壊とデッキ破壊を行いながら、《【センター】アンジュ レベル3’》のゲーム1で圧をかけるパワー系のデッキだ。このアーキタイプは主流にならなかったが、アンジュはこの弾以降、別の形でこのメタゲームに爪痕を残すことになる。

「ディソナ祭」は久しぶりのチーム戦ということもあり、同大会には全国から多くのプレイヤーが参加。上位陣の活動エリアを見ても、関西、東京、名古屋と三大都市圏に散っており、構築にもその地域の特色がにじんでいた。
オマケの要素として「チームコーディネート賞」という、お揃いの衣装やコンセプトで臨んだチームへの特別表彰もあり、こちらに全力投球したチームもいたとかいなかったとか。

3月以降のメタゲームでは、これらのデッキが徐々に洗練されていく様相となった。
目立っていたのはやはりディソナだったが、それと並行して、サシェやリメンバ、時折登場するヒラナやアンジュといったショット系デッキなども顔をのぞかせていた。それでもやはり総じてディソナのカードパワーが高いことから、大きな変化が無いまま、次弾「CONCORD DIVA」を迎えることになる。
「ディソナ編」は前後編ゆえ、「CONCORD DIVA」でも「ディソナ」の強化が確約。「ディソナ祭」では《不穏☆FU☆ON!!》という、文字通り不穏なピースが発表されており、ディソナ環境はどんどん加速していくことになる。