もりあ杯の決勝戦。キーセレクションのテーブルのひとつは、「ヒロイン対決」となった。
カードは遊月VS花代さん。初代アニメで香月くんを巡って、女と女の熱いバトルを繰り広げたり、繰り広げなかったり。「花代さんは嘘つきだ!」という名台詞が生まれたと思えば、インモラルなことになりかけてみたりと、視聴者に強烈なインパクトを与えたのは懐かしい。色々な意味で。
もちろん、彼女らはカードの舞台でも、何度も熱いバトルを繰り広げていた。「晩成爾改」「四面楚火」「燐廻遊月」など、ウィクロスの歴史に名を残すデッキの多くが、2人の名を冠している。
時代は流れ、キーセレクション。ユヅキが、遅れて華代さんがキーセレクションに参戦し、「伝統の一戦」は現代も続く。
「速攻の華代」VS「パワーのユヅキ」を、とくとご覧あれ。
ユヅキ(ポストマン選手)VS華代(ノア選手)
(そろそろここに書くことがなくなってくるんですよね)
「対ユヅキに、そんなにいい思い出はないんだよなあ」と、ノア選手はぼやいた。「華代にはいい負け方をしていないからなあ」と、対峙するポストマン選手もごちた。試合前のマイクパフォーマンスは、どこかネガティブ。よくあることだと多くの対戦を見てきた筆者は思う。自分のデッキへの自信よりも、対面のルリグへの不安の方が勝るものだ。
ただ試合が始まれば、そんな弱音は許されない。なにせ決勝戦。勝ったチームが、優勝の栄冠を抱けるのだ。対面が誰であろうと、デッキと自分を信じて勝つしかない。
「じゃんけんだなあ」「ですね」とぼやきつつ、ポストマン選手が先攻を勝ち取る。
長身でどこか飄々としているプレイヤーだが、今日は背筋がしゃんと伸びている。いつもより気合いが入っている証なのだろうか。
ノア選手は隣で盛り上がるチームメイト2人を、なんとなく羨ましそうに見ていた。チームメイトは、リラックスムードなかんでこ選手ときなこ選手。励ましてほしいのか、声をかけてほしいのか。心のうちはわからない。
何はともあれ、オープンの合図とともに、最終戦が始まった。
先攻のポストマン選手が、チャージを飛ばしグロウ。レベル1はコイン取得ではなく、1枚捨てて1枚ドローのタイプだ。
<コケケロ>を2枚立ててターンを譲る。パワーは3000。バニラ全盛期となる現代より前から、ユヅキの戦線を担っていたシグニだ。
(今となっては3000は一つのライン)
ノア選手は<コケケロ>に苦い顔をしつつも、<On>をチャージしてグロウ。コインを得て展開したのは、エクスプロード収録の<ララ・ルーキー>だ。
デッキの上から4枚が公開される。見事に赤いカードが4枚めくれ、<狂騒の滅炎>をトラッシュに起き、<祝福の五光><Mdia><Fg>を手札に加えた。「赤いカード、なんですね」とポストマン選手が驚く。
<Fg>を場に出し、<Sk>で<Fg>をトラッシュ送りつつ、<コケケロ>をバニッシュ。2枚目の<Fg>を立てて、颯爽とアタックフェイズだ。いきなりの2点要求に、通す以外ない。
早速試合が動く。割られた1枚目のライフクロスから、いきなり<スピノー>が飛び出した。緑1で相手のシグニをエナゾーンに送る効果を、ポストマン選手が嬉々として発動する。「イキリポイント!」と謎の徳を積みながら、残るシグニをエナ送りに。ルリグはきっちりガードして、6−7。
(華代デッキ序盤の要。一気に手札を伸ばせるのが魅力だ)
手札からエナを伸ばし、ユヅキがレベル2へグロウ。2枚の<オオサンショウ>を立ててアタックだ。
ノア選手は<ララ・ルーキー>を切って、要求している<オオサンショウ>をバニッシュ。続けて<タクティカル・パニッシュ>で<コケケロ>を溶かし、ライフクロスを守り切った。場のシグニは<オオサンショウ>に殴られ、ノア選手の盤面がガラ空きになるも、ルリグアタックはガード。ライフは動かず、6−7だ。
ノア選手のターン。コインを持たないユヅキを前に、<五光>をエナチャージ。華代がレベル2へグロウした。
得たコインの1枚を使い<鎮護国禍>を展開。残る<オオサンショウ>を焼きつつ、選んだモードはランダムハンデスだ。サーバントを射抜いた挙句、ポストマン選手の手札が1枚に落ち込む。<On><Anfo><Fg>がシグニゾーンに並ぶと、<炎真爛漫>を発動。アタックフェイズに移り、宣言は1だ。
何もできないポストマン選手がアタックを通す。1、2、3、ルリグ。ライフバーストも1ドローのみと、先ほど積んだ徳の効力は薄かった様子。ライフは一気に2−7まで落ち込んだ。
(メンタリズムアーツ。ガード不可、アーツ制限、コスト縛りと盛りだくさん)
ため息交じりにポストマン選手はレベル3へグロウ。4枚の手札のうち、レベル4は2枚とかなりつらそうだ。
<花代&緑子キー>(はなみどキー)をアンロックし、<On>を除去しつつ、<オオサンショウ><メガネワニ>を回収。公開領域に<ティロス>が見えておらず、厳しい展開だ。<プリテゴ><オオサンショウ><メガネワニ>でアタックに入る。
要求は<プテリゴ>のみだが、ノア選手が「考えます」と手を止める。<メガネワニ>がアタック時の手札公開で、何かしでかすのが心配なのか。とはいえこれを通した。
<メガネワニ>のアタックで、<オオサンショウ>が回収される。全てのシグニをバトルで除去し、<プリテゴ>でライフクロスを割ると、<Mdia>が飛び出した。<メガネワニ>をバニッシュし、ルリグアタックはガード。
2−6とライフは動かなかったが、バニッシュの応酬が繰り広げられている。ライフ差は激しいが、一進一退の攻防が続く。
(アタックした時に手札を公開するシグニ。「手札から公開された時に」の効果を持つ水獣たちと相性がいい)
華代はグロウしない。
ノア選手は<AnFo><Pab>を立てて、<祝福の五光>でドローに入った。空っぽだった手札が潤い、華代が体制を立て直す。<五光>のランダムハンデスで、サーバントや<滅炎>が落とされるも、ノア選手は気にするそぶりを見せない。
攻めは続く。場の<Anfo>が華代の起動効果でトラッシュに送られ、1ドロー。<プリテゴ>が焼かれ、残りは1面だ。<Sk><Pab>が並び、<滅炎>が最後の<オオサンショウ>を焼き払う。何度目かの全面開け。アタックフェイズ、宣言は1だ。
「速攻の二止め戦術」の名に恥じぬ、怒涛の攻めがユヅキを、ポストマン選手を襲う。
これ以上ライフを失いたくないポストマン選手は、<暴風警報>と<はなみどキー>のエクシードで地上を防ぎ切った。爛漫なルリグアタックは防げず、残りライフは1枚。ライフバーストも静かだ。1−6。
(除去は当然だが、全体バフの効果も意外と強力。黒や赤デッキに案外刺さる)
ターンを受け取ったポストマン選手。
首を傾げながらも大きく息を吐き、ルリグデッキに手をかけた。グロウ。レベル4。さあ、反撃だ。
ユヅキの出現時で<ティロス><コケケロ>を加えると、その<ティロス>を場に出す。「1、2、3、4・・・、5枚で13000です」と、高めのパワーラインを作り上げた。2枚目の<ティロス>も飛び出す。同じくパワーは13000だ。赤いデッキにありがちな、「パワー12000以下のシグニをバニッシュする」の効果をケアした、13000という数値。その代償に、ポストマン選手は全ての手札を公開している。サーバントはない。
さらに、2枚目の<ティロス>で公開された<オオサンショウ>がエナを潤す。そして<オワンクラゲ>が、満を持して登場だ。アタックフェイズに入る。開始時にレベル4のサーバントを手札に加えた。
ライフが潤沢なノア選手だが、手札やエナの総量は心もとない様子だ。<ハッピー5>で<ティロス>を止め、攻撃を受けた。
まずは<ティロス>が貫く。1点。ライフバーストは「サーバント回収」。続けて<オワンクラゲ>が貫く。ライフバーストは<Mdia>。1ドローだ。「相手のライフ、ゴリゴリなんだけど・・・!」という悲鳴と同時に、ユヅキのルリグアタック。ガード。1−4。
(レトリックで登場したエースアタッカー。手札補充と貫通を両立した、デッキの要だ)
徳はノア選手の方が高かったようだ。ターンを受け取り、サーバントをエナチャージ。
前ターンのバトルで生き残った<Pab>を華代効果でトラッシュに送りつつ、あわせて2ドロー。引いた2枚を前に、ノア選手が小さく息を飲んだ。少ないリソースでの、ギリギリの綱渡り。レベル4相手に、華代はどこまで戦えるのか。最後のコインを使って<APEXキー>を展開。そして<On>を場に出し、サーバントを切って、1ドロー。引いたカードを見て、ノア選手が頭を抱えた。
「しょうがないかな?」と<Sk>を場に出し、<On>の起動効果でアサシンを付与。<Mdia>を<オワンクラゲ>の正面に立て、アタックフェイズに入った。思い描いた盤面なのかは、ノア選手にしかわからない。が、アグレッシブに攻めていた数分前の表情から、心なしか余裕が消えているように思える。
ひたひたと聞こえる「逆転されるかもしれない」という不安。振り払うかのように、爛漫で4を宣言した。<オワンクラゲ>がエナゾーンから、レベル1のサーバントをポストマン選手に渡す。
対するポストマン選手は、とにかくライフを残しておきたいところだ。<はなみどキー>のエクシードでアサシンを持った<On>を止め、ライフクロスを脅かす脅威を取り除いた。
要求を受ける。パワーが上がった<Mdia>が<オワンクラゲ>をバニッシュ。ルリグアタックは、レベル1のサーバントが防ぐ。ライフクロスに変化はなく、1−4のままだ。
(キーセレにおけるスペルの価値を底上げしたキーカード。最強のルリグの名にふさわしい性能を誇る)
1点をどこまで守れるか。ポストマン選手は返しのターン、まずは<クロコワニ>を場に出した。
緑2を支払い、1枚をエナに、1枚をデッキトップに。エナは潤沢、手札は扇。あふれんばかりのリソースを振りかざし、ユヅキが華代を攻める、攻める。<爛漫>で詰め切られる前に、華代が残す4枚のライフを素早く削っていけるかが勝負の鍵だろう。リソースはあっても、猶予はあまり、残されていない。
「ポスト勝ったよ!」と、勝負の場に声が響いた。
声の主は、ポストマン選手のチームメイト、オールスター担当のアスパラ選手だ。カーニバルを下し、チームにまず一勝をもたらした。小さく頷く。気持ちにも余裕ができた。
コインを切って、「バーニング」を宣言。<オワンクラゲ>を場に立て、アタックフェイズに移った。場は、正面が空いた<ティロス>と、アタック時に手札を公開する<オワンクラゲ><クロコワニ>。半端な防御では、一瞬で3枚のライフクロスが吹き飛ぶ陣営だ。
それを知らないノア選手ではない。<APEXキー>のエクシードで、<滅炎>を発動した。
<ティロス>が焼かれ、<APEXキー>の効果で<オワンクラゲ>がバニッシュされる。役目を終えた<APEX>を<ハッピー5>のアンコールコストに充てつつ、<クロコワニ>のアタックも防いだ。ルリグアタックは、ガード。1−4と変わらずだ。
華代のリソースはギリギリだ。ドローフェイズを終え、デッキは残り2枚。リフレッシュも近い。
ノア選手はシンプルに。<Tan>を場に加えるのみでアタックフェイズへ移った。爛漫の宣言は4。要求は、<Tan><Mdia>とルリグのみ。とうとう攻め手が緩んだ。
そこを見逃さない。ここぞとばかりに、<獣群邁進>が飛び出した。
手札とトラッシュをデッキに戻し、3ドロー、4エナチャージ、5枚公開。ユヅキのダイナミックな専用アーツが吠える。念入りにデッキをシャッフルしながら、3、4、5の動きに入る。
3ドローで驚き、4エナで安心し、5エナで「あぶね」と苦笑した。悩みながらも、<Mdia>の前に<メガネワニ>を、<Tan>の前に<クロコワニ>を配置してアタックに備える。<メガネワニ>はバニッシュされるも、ルリグアタックはレベル2のサーバントでガード。手札もエナも、しっかり立て直した。1−4。
(コストも効果も豪快なアーツ。アタックトリガー持ちには弱いが、上手く使えば3面防御だ)
レベル3のサーバントをチャージし、<Mdia>の前に<ティロス>を配置。公開枚数は4枚、いや、5枚だ。
13000の<ティロス>と、残る2枚の<クロコワニ>でアタックフェイズ。防御手段がほぼないノア選手は受ける他になかった。まずは<ティロス>が<Mdia>を貫く。ライフクロスは何もない。続けて<クロコワニ>がアタックしながら、5枚の手札を公開しつつ2エナチャージだ。
手札から見せられた<オオサンショウ>が、さらに2エナチャージ。加えて<ダンクルテウス>が4エナを喰らい、<クロコワニ>の正面の<Sk>を吹き飛ばした。1点。ライフバーストは1ドロー。ノア選手はデッキトップに手をかけ・・・、ドローをためらいつつも、引いた。リフレッシュ。2枚目の<クロコワニ>とルリグアタックを残し、残るライフは1枚だ。
最後の<クロコワニ>のアタックは、3枚公開で1エナチャージだ。混ざった<オオサンショウ>が2エナチャージで、バトルで<Tan>をバニッシュ。ルリグアタックはガードされ、ライフクロスは1−1だ。
(手札から公開されると、4エナを払えば相手シグニを除去できる。<メガネワニ>などが突然ライフを狙ってくるように)
ここでポストマン選手の隣2人が勝利し、優勝が固まった。
ノア選手は一矢報わんと、1勝を掴み取ろうと奮起する。とはいえ「厳しいかな・・・」と、少ないリソースを前に、今にも闘志が消えそうだ。
<AnFo>を華代効果でトラッシュに送り、1ドロー。「ダメか・・・?」と漏らしながらも、何とか攻めようと<サーバントO4>を場に立てアタックフェイズだ。爛漫で4を宣言。1でガード。届かない。
ポストマン選手のターン。盤面を変えずにアタックフェイズ。
最後の非公開アーツ<焚骨砕身>で2枚の<クロコワニ>が吹き飛ぶ。<ティロス>が1点を奪い、ルリグはガード。
ライフは0−1と、とうとうひっくり返った。
ノア選手は場のサーバントをチャージし、トラッシュとエナを入念に見る。
残るアーツは<ハッピー5>のみだ。その<ハッピー5>で<Pab>を加え、3枚の原子シグニを並べると、「バーニング」で食らいついた。0−0。<Pab>の効果で手札を増やし・・・。
頭を抱えた。飛び込んできたのは、スペルだった。
アタックフェイズ。<真空斬撃>と豊富なサーバントが、最後の反撃を防ぎ切った。
WIN ポストマン選手
〜こぼれ話〜
「序盤に華代が押し切れば勝ち、耐え切れればユヅキの勝ち」という予想通り、綺麗なバトルが繰り広げられた。
序盤からコンスタントに3面要求を続ける華代と、それを耐えてレベル4に乗り、追い詰めていくユヅキという展開だった。現環境において、華代と対面したデッキが要求される、「力つきるまで耐えられるか否か」を、わかりやすく表したバトルだったといえよう。決勝らしい、模範的なバトルだった。
ユヅキが耐えられたのは、<炎真爛漫>のガード制限を全く意に介さなかったことだろう。豊富な回転力と<オワンクラゲ>でのピンポイントな回収を武器に、宣言と異なる数字のレベルで、きっちりとガードを続けていた。他のルリグであれば、ここまできちんとサーバントを抱えることは難しいだろう。シグニとルリグの猛攻を、きちんと耐え切ったユヅキは見事だった。
最後こそ攻め切れなかったが、華代の猛攻は強烈だった。
ルリグデッキでは<タクティカル・パニッシュ>も特徴的。ライフや序盤のシグニを守りつつ、返しの要求にもつながる、攻防一体のアーツとして役立っていた。一時期の夢限デッキが採用しており、その使い方に近い、というような具合だろうか。<イノディ><血晶照射>を採用せず、<焚骨砕身>を選んでいるのも目を引く。
決勝戦は敗れてしまったが、ノア選手は決勝戦まで一敗もせずに勝ち上がっている。「やれることはやれたと思う」と清々しそうな表情を浮かべる彼に、チームメイトからは「お疲れ様」「楽しかったよ」と、優しい声がかけられていた。
個人戦とは異なり、仲間との「絆」が大切になるチーム戦。
このレギュレーションは8月で終わりだが、またどこかで、熱いバトルを見てみたいと思う。