溝の口に来た。
溝の口なのか溝口なのかもうろ覚えだし、建物の名前も「マルイ」なのか「アイアイ」なのか「オイオイ」なのわからない。「マルイ」らしい。生まれ故郷には「OIOI」と書いて「マルイ」と呼ぶハイカラな建物はないのだ。
ところで、明日は世界大会予選の初日「ウィクロス学園祭」だ。多くのプレイヤーが調整のため、このセレモニーで己のデッキを磨いている。そんな中でのスイスドロー5回戦・・・、実質の準決勝まで勝ち上がったプレイヤー、シロネコ選手とアサギ選手もまた、明日を見据えての参戦なのだろう。
先攻はシロネコ選手。ご存知「週刊エモ太郎」の中の人で、数々の名デッキを生み出したプレイヤーだ。今回はにじんさじを手に、ここまでしっかり全勝で勝ち上がっている。5枚全てをマリガンし、試合開始のコールを待っていた。
後攻のアサギ選手は1枚をマリガン。翠子やユヅキなどを使い、キーセレを中心に活躍しているプレイヤーだ。
2人はじっと手札を見ながら、最初の動きを考えている。シロネコ選手は鼻歌まじりに、やや余裕の表情だ。アサギ選手は無表情のまま。
オープンのコールで試合開始だ。
アサギ選手(翠子)VSシロネコ選手(にじさんじ)
(古豪VS新進気鋭)
シロネコ選手の先手。チャージなしでグロウ。手札を1枚捨て1ドローし、まずは登録者数10万人。レベル1は<静凛>だ。
そのまま<ファイト・ゴースト>。にじさんじデッキの安定した初動。登録者数を30万人にしつつ、電機シグニを2枚サーチ。デッキや手札を入念に見ながら、「どうしようかな」と迷いつつ、<リオン>と<リリ>を加えた。
そして<リリ>を場に出す。デッキトップを調整し、<リオン>を場に出し、ターンを渡した。
後手のアサギ選手。2ドローで手を止め、手札を1枚、2枚と裏向きに置いた。「あー」と浮かない表情。チャージは通過し、レベル1へグロウだ。手札を1枚捨て、コインを得る。
そのまま手札の<シルフ><モモイヌ>を展開し、<シルフ>の起動効果でシグニを移動。<モモイヌ>にランサーを付与し、アタックフェイズだ。<リオン>を貫き、地上で2点。ルリグはガードされるも、5−7でターンエンドだ。安定の立ち上がり、といったところか。
シロネコ選手はエナチャージし、レベル2へグロウ。登録者数は40万人にのぼる。
メインフェイズ。まずは<ネクスト・レディ>。コインを得られず、キーを貼らないにじさんじ勢が、ルリグの下敷きを有効に使うための1枚。1ドロー、1エナチャージでリソースを伸ばし、<尊>2枚を立ててアタックフェイズだ。アサギ選手はそれを通す。
まずは<リリ>で1点、<尊>で2枚のシグニをバウンスしつつ、続けて2点。LBで2エナチャージが出るが、ライフクロスを守ることはなく、3点を一気に刻む。ルリグはガードし、5−4。にじさんじ側が、序盤から<尊>できっちり点数を取った形だ。
(序盤の主力アタッカー。中盤以降はエナチャージ要員にも)
ターンが渡る。アサギ選手は<プロテイン>をエナにおき、レベル2へグロウ。
<尊>の効果で手札に<シルフ>などが戻っているため、<モモイヌ>などのランサーを絡めれば、一気に点数を取り返せる場面ではある。おそらくルリグデッキにあるであろう<チアサシェキー>は・・・、「コイン使います」の言葉と共に、表になった。1エナを支払い、早速効果発動だ。
アサギ選手は浮かない表情で、デッキを何度も何度も見ている。ライフバーストの把握やアタッカーの状況などを頭に叩き込み、<チアサシェキー>で今後何を加え、どういった盤面で攻めていくのかをを計算しているのだろう。塾考の末に<モモザル>を加えると、「まあ、これかな」と淡々と、<シルフ><モモイヌ><モモザル>を展開した。シグニの位置が動き、<モモイヌ>がランサーを持つ。アタックフェイズ。
アーツを吐く理由はない。アサギ選手は全面踏み、最後にランサーで1点。ルリグアタックはガードされるも、4−4とライフクロスが並んだ。
(翠子を再び一線級に押し上げたカードの1枚)
試合は淡々と進んでいく。
シロネコ選手がレベル3へグロウ。登録者数を60万人に伸ばすと、2枚目の<ネクレ>で1ドローだ。そして<しずく><尊>の2面のみで、アタックフェイズに移った。これも通る。
<尊>で正面をバウンスし1点を取り、ルリグアタックは防がれる。ターンエンド。4−3と、ゆっくりゆっくり試合が進む。
静かであるがしかし、確実に点数は削り合っている。
コンスタントに点数を取り合っていると、防御数が多いルリグが有利になるのは必然だ。にじさんじと翠子であれば、後者の方が防御数が圧倒的に多い。ただ、それはコンスタントに試合が進めばの話だ。少しでも要求が緩んだら、すぐにひっくり返されてしまう。ダメージレースに遅れを取らないよう、しっかりと要求を続けていきたいところ。
そんな翠子がレベル3へグロウ。リミット6で1ドローのルリグは、デッキの構築にしっかり合った1枚だ。
レベル3で組むことの多い盤面は<ケイローン><モモイヌ><モモザル>で、レベルの合計は6だ。ルリグデッキのコイン消費量も、<チアサシェキー><はなみどキー>「テンタクル』の4枚。1ドローが得られる代わりに、リミット上限の低いルリグであるが、コンセプトにがっちり合ったルリグ。1枚1枚の選択に、しっかり理由が込められている。
そんな翠子の元で展開されている<チアサシェキー>。サシェが中盤の点取り屋<ケイローン>を加えると、盤面をリムーブ。中央に<ケイローン>、<モモイヌ><モモザル>を配置。<モモザル>の効果で<モモイヌ>と入れ替わると、ランサーを持ったシグニが2体、ライバーたちの正面に立つ。空いたシグニゾーンに、きっちり<モモザル>が立ち、アタックフェイズだ。
安定の盤面で、要求は3点。シロネコ選手はノータイムで<ナンバー・バインド>を放った。
「アタックフェイズ」の言葉から、その間コンマ1秒。即決の防御により、全てのシグニのアタックが止まる。ルリグアタックのみ通り、3−3だ。ターンエンド。
(原作見ましょう読みましょう)
シロネコ選手がレベル4へグロウ。レベル4は<月ノ美兎>だ。
まずは出現時の効果でサーバントを加えると、ルリグデッキに手をかけ、<美兎サポーター 凛&楓>をアンロックだ。コインを持たないにじさんじルリグが使える、唯一のキーカード。<モモイヌ>を除く2枚をバニッシュし、登録者数を80万人に伸ばした。
そのまま<椎名唯華>2面を並べてアタックフェイズ。アタック時にノーコストバウンスが可能な、委員長の主力シグニ。
アサギ選手は<暴風警報>で応酬だ。地上の2点が止まると、残り1点のみ通り、ルリグはガード。ライフクロスは3−2と、大きな変動は起こらない。ルリグアタックと同時に、登録者数が90万人まで伸びた。
攻めるシロネコ選手は大きなリソース損失もなく、手札を6枚抱えている。アサギ選手も<サシェキー>で手札を安定させながら、しっかり攻めを継続する。ライフバーストによる大きな逆転もない。プレイミスか、ライフバーストが試合を大きく左右する、といったところだろうか。両者表情を崩さず、真剣な面持ちでプレイを続けている。
遅れて、アサギ選手がレベル4へグロウ。緑エナを支払い<暴風警報>を回収し、<サシェキー>で<イバラヒメ>を加えた。
<シルフ><モモイヌ>と展開すると、<モモイヌ>を<尊>の前に動かし、ランサーを与える。そして<シルフ>をリムーブ。2枚の<イバラヒメ>を展開し、<棘々迷路>2枚を加えたところで、アサギ選手の手が止まった。が、何事もなかったかのように、アタックフェイズへ移行する。
<迷路>を2枚発動して、<唯華>2面をエナに送ると、シロネコ選手は<サポートキー>の効果を発動だ。アサギ選手の全てのシグニをバニッシュし、3ドロー。ルリグはガードし、3−2でターンを終えた。
(コインをもらえないにじさんじ勢。キーカードのスペックは桁違い)
ターンが返る。シロネコ選手は<ひな>から始動した。デッキトップ3枚を見て、1枚を手札、残りをデッキの上下に置く、デッキの潤滑油。そのまま全面リムーブし、<詩子>と2枚の<小夜>でアタックフェイズだ。<詩子>でアンコールを封じた盤面に、アサギ選手は<暴風警報>で応じた。
1点のみ通り、ルリグはガード。3−1と、ペースが変わらないまま試合は進む。ライフのみ見れば、シロネコ選手が有利だ。そして、ここで登録者数が100万人になる。にじさんじの各種カードがフルパワーで動くための条件を、ここで満たす。ターンエンド。
アサギ選手も食らいついていく。「どうしようかなこれ」と小さくつぶやきながら、次の攻め手を探しているようだ。
まずは<サシェキー>で<ケイローン>を加える。そして<ネコムス>での1エナチャージで、エナゾーンには同じく<詩子>が置かれた。シロネコ選手が少しだけ目を丸くする。「白・・・?」とつぶやいたように見えるが、意を介さないように、返しの一手を探しているようだ。
アサギ選手は<ネコムス>を場に出したところで動きを止め、残るルリグデッキをじっと見ながら、口を真一文字につぐんでいた。大きく息を吐き、<サシェキー>を破棄するそぶりを見せたが、しかし手を止める。要求を絶え間なく続けてきたアサギ選手に、ここで初めて、迷いが生じたようだ。
結局<サシェキー>を破棄し、3エナを払って<はなみどキー>を展開。シロネコ選手の<詩子>をエナに送り、2枚の<イバラヒメ>を回収だ。<モモイヌ><イバラヒメ><イバラヒメ>と並べ、2枚の<迷路>をルリグデッキに送ると、「テンタクル」を宣言し、アタックフェイズだ。
<迷路>で<モモイヌ><イバラヒメ>をパワーアップさせると、残る<小夜>2枚をエナに送った。シロネコ選手の場がガラ空きになる。シロネコ選手は「考えます」と短く漏らした。
(初期から翠子を支えるシグニ。2人1組で運用するのが基本)
ライフクロスは残り3枚。首を傾けて手札を見ながら、「通すか」と手を差し出した。
3枚のライフクロスがテンポよくクラッシュされていく。ライフバーストは何も起こらず、最後に<ドーラ>が飛び出すのみに終わった。1ドローを得て、ルリグはガード。0−1と、シロネコ選手のライフが一気に砕け散った。この試合で初めて、大きく試合が動いた。
シロネコ選手のターン。メインデッキは残り1枚。まずは<有栖>を中央に置いた。
「出現時はなしでいいんだけど」とごち、間髪入れずに「起動」と唱えた。残り1枚のデッキからは<唯華>が飛び出す。リフレッシュ。<有栖>をリムーブし、<唯華><尊>でアタックフェイズに入った。登録者数は100万人。<唯華>がアタックするだけで、とんとシグニをバウンスできる。
翠子の「テンタクル」が発動される。ルリグアタックと<尊>が止まる。そして中央の<唯華>が、<はなみどきー>で除去された。「どうぞ」の声に、シロネコ選手が「考えます」と答え。
「ターン終了で」と手を差し出した。エナ3、ライフバースト1。リソースを与えまいという判断なのか。それとも2点であれば貫けるのか。シロネコ選手のルリグデッキはあと2枚。この判断の是非は、のちにわかることになる。
アサギ選手は<唯華>の前の<イバラヒメ>をエナに送ると、そこに<プロテイン>を配置した。エナの<イバラヒメ>を手札に加え、アタックフェイズに入る。要求は正面が空いた<イバラヒメ>の1点のみ。ライフクロスのないシロネコ選手は、ここでアーツを吐かねばならない。
応じるように、<マスト・ハイド>だ。<イバラヒメ>は当然のこと、<モモイヌ>とルリグも止まる。0−1でターンエンドだ。ここでシロネコ選手の防御手段が尽きてしまった。
シロネコ選手のターン。委員長の「生放送」の時間だ。
<イバラヒメ>がトラッシュに置かれ、デッキから<有栖><唯華>が手札に加わる。まずは<有栖>が中央に、そして<ひな>が、手札、デッキトップ、デッキボトムを調整した。<ひな>が<有栖>に2回攻撃を付与すると、手札から<唯華>が飛び出し、アタックフェイズ。にじさんじの主力ライバーたちが揃い踏みだ。
(手札の確保と連続攻撃。採用数は少ないが、要所で使えば非常に協力))
アサギ選手は<唯華>を<はなみどきー>でエナに送ると、<ハッピー5>で<有栖>を止めた。
<尊>が<モモイヌ>を貫くと、ルリグはガード。0−0でターンエンドだ。
アサギ選手のターン。
最後は<ハッピー5>で<イバラヒメ>を回収し、<イバラ><イバラ><ケイローン>。
アタックフェイズで2枚の<迷路>が飛ぶと、シロネコ選手はデッキを畳んだ。
勝者 アサギ選手