あらゆるコンテンツに共通することかもしれないが、「初代」の輝きは鮮烈だ。それはウィクロスでも同じこと。
2021年9月上旬、ディーセレに往年のルリグたちが参戦するという一報に、多くのプレイヤーが湧きたった。センタールリグとしてタマ、ピルルク、ウリス、ユヅキ。アシストルリグとして緑子、花代の登場が告知。2014年放送の「selector」シリーズで輝いたルリグたちが、最新フォーマットのディーヴァセレクションに帰ってくる。「おかえり、セレクター」をキャッチコピーに打ち出されたニュースは、熱に満ちあふれたものだった。

2021年9月は、閉塞感に満ちた世界だった。
コロナ禍はオミクロン株で続き、関東圏には緊急事態宣言が発令されている。国民には様々な制限を課された中でも、東京オリンピックが無観客で開催されるという矛盾した状況に、息詰まるような感覚があった。プレイヤーがコミュニティとして根城にしていたTwitterも、ワクチンへの感情やコロナ禍への対応などで分断が進み、殺伐とした場になり果てていた。
「おかえり、セレクター」の言葉は、もちろんタマたちの存在感もあっただろうが、そういう社会的な背景もあったからこそ、これまで以上に輝いていたように見えた。「あの頃の日々が戻ってくる」「またあのルリグたちと遊べる」という希望が、太陽のような輝きとしてもたらされたのだ。
1:ただいま!ばとる!
満を持して発売された第6弾「WELCOME BACK DIVA ~selector~」。その輝きをけん引したのが、同時発売された構築済みデッキに収録された、元祖主人公のタマだった。センタールリグ《奏月の巫女 タマヨリヒメ》は、オールスターのタマが得意とする連続ルリグアタックを武器に、ディーヴァセレクションに乗り込んできた。
自身のアタック時にシグニを2体ダウンさせ、2エナを支払うことで、自身をアップする能力を持つ。サーバントが《サーバント #》の1種4枚しかないディーセレにおいて、コンスタントに連続ルリグアタックができるのは強力だった。同様の戦術では、これまでも【コウメイノヴァ】が活躍していたが、タマは《コウメイ》が持つ能力を内包しており、「ハーモニー」の条件もないことから、幅広いデッキ構築が可能だ。事実、ピースに《ピーピング・フューチャー》を採用したり、白単で構成して《ホワイトヘヴン》を使ってみたりと、さまざまな構築が登場。そしてどれもが一定の活躍を見せた。
ルリグで攻める分、白シグニの火力は控えめだが、《聖天姫 エクシア》や同時に登場した《コードハート リメンバ//メモリア》など固いシグニを採用することで、「シグニで守りルリグで攻める」という戦術を確立。ゲーム1でシグニをアップさせることもできるため、「ルリグアタック時にアタックを終えたシグニ2体をアップ→連続ルリグアタックのためにその2体をダウン→ルリグをアップ」と処理すれば、シグニによる攻め+ルリグの連続攻撃も可能だ。元来のルリグ人気もあってか、タマは登場以降長く、一定以上の水準での活躍を見せることとなる。
そんなタマの強さを支えたシグニの1体が、《コードハート リメンバ//メモリア》だ。

ルリグがシグニとなった「メモリーシグニ」の1種で、そのルリグがオールスターやキーセレクションなどで、ルリグ時代に持っていた能力や特徴を基盤にしている。リメンバの特徴は「妨害」で、相手の起動能力やガードに対して、無色1の支払いを強いる「課税」する能力を持って登場した。
連続攻撃を仕掛けるタマがこの《リメンバ//メモリア》を採用すれば、相手はガードのたびにエナを支払うハメになる。そして起動能力への課税も強力で、レベル3ルリグの要である「ゲーム1」や、トップメタのデウスたちが持つ【ソウル】の付与など幅広い能力に対して、納税の義務が課されることになった。
白がバウンスを得意とすることや、バトルでのバニッシュをあまり行わないことも相まって、相手のエナは常にカツカツ。ダウン状態であればパワーが3000上昇して15000になり、バトルやピースでも除去しづらいことから、タマや白ルリグではもちろん、《エクシア》と肩を並べるレベル3白シグニとして、プレイヤーのエナ事情を悩ませ続ける存在となる。
タマに限らず、デッキ構築の幅を広げた新要素が、今弾から登場した「ドリームチームピース」だ。場に異なる色のルリグが3人いると使えるピースで、No LimitやCard Jockeyたちが持つ「チームピース」に匹敵する効果を持つものが多い。
今回登場したドリームチームピースの多くが、ルリグアタックを強化する能力になっていた。ルリグアタックと同時にライフクロスをクラッシュし、ライフバーストの発動も封じられる《一覇一絡》や、ピーピングハンデスと相手のルリグのアップに課税を伴う《ピーピング・フューチャー》など、そのどれもがこれまで登場した《Glory Grow》などに並ぶスペックを誇る。ルリグアタック強化ではないが、《マイアズマ・ラビリンス》は除去、蘇生、回収、デッキ破壊をこなせる対応力の高いピースで、往年の《フォーカラー・マイアズマ》を思わせる効果が注目された。



これらのドリームチームピースの登場で、No LimitやCard Jockeyといったチームの枠にとらわれない、さまざまなデッキを構築できるようになった。事実この弾以降、多様なピースやアシストルリグ、センタールリグが活躍できる基盤が整い、デッキの多様化が加速していくことになったし、従来のチームルリグでも《頂点へ一歩 ヒラナ》が《一覇一絡》を採用するなど、デッキ構築に選択肢が生まれていくことになる。ただ、カードパワーの都合から使用されるアシストルリグの種類は限られ、青がマドカ、黒がマキナ、緑がメルと、メタゲームが進むにつれ同じような顔ぶれになっていく側面もあった。いずれにせよドリームチームピースの登場が、ディーセレでの大きな転換点となったのは、まぎれもない事実だろう。
さて、そんなタマの登場があっても、動じなかったのが【DXM】の2人だった。特に【原子デウス】はここから、ディーセレの覇者としての地位を確固たるものにしていくことになる。
発売直前に開催されたディーヴァグランプリ1stで注目された【原子デウス】は、多くのプレイヤーに使用され、構築の最適化が加速した。6弾では<原子>への直接的な強化はあまりなかったが、ピース《Garden of Singularity》を採用してガードの安定感を高める構築も登場。ガードが重要な相手にはピースとして使い、そうでなければエクシード3のコストに充てるなど、柔軟に戦える強さは健在だった。

ただ、《リメンバ//メモリア》の課税が【ソウル】を付与する起動能力に刺さったり、パワー15000の《リメンバ//メモリア》に《H2O》がバトルでバニッシュされたりと、《リメンバ//メモリア》は天敵といえる存在だったし、同時に登場した《コードメイズ ユキ//メモリア》で《H2O》の耐性が無効化され、除去されることも増えた。それでも総合的なパワーは頭一つ抜けていたため、メタゲームの中心としてあり続けた。
一方の【チームエクス】は《コードハート リメンバ//メモリア》の処理に悩まされたり、同時に登場した《幻水姫 シィラ》に【アサシン】を消されるなど、【デウス】に後塵を拝す面も目立っていた。それでも純粋な火力は非常に高く、《Trigger of Victory》《DEATH DECK》もあって盤面の再現性も高いことから、こちらもデウスと並び、トップメタの一角として輝いていた。事実、この弾の発売から約半年後に開催された2022年5月のディーヴァグランプリ2ndで優勝したのは【チームエクス】であり、《凶天姫 タマ//メモリア》や《DEATH DECK》でデッキを削る戦略を取り入れていた。

メタゲームはエクス、デウスの2人を中心に回りつつ、タマを主体とした白いカードが、徐々に存在感を発揮し始めることとなる。ただ、白いカードへの苦手意識などもあってか、エクスが徐々にデウスの活躍から引き離されようとしていた。



この弾ではタマのほか、ピルルク、ユヅキ、ウリスの3ルリグがセンタールリグとして登場。特にユヅキとウリスはディーセレ以上に、オールスターのレベル3ルリグとして活躍。久しぶりのオールスター強化ということもあって注目されたが、ディーセレではデウスたちの牙城を崩すことはできなかった。
シグニに目を向けると、前述した《リメンバ//メモリア》《ユキ//メモリア》《シィラ》など、白に優秀な能力を持つものが目立つ。メモリーシグニでは《コードアート ララ・ルー//メモリア》が「新たに能力を得られない」常時能力を持っており、優秀な防御アシストルリグの1枚である《MC.LION DISRESPECT》の貫通手段として活躍。ララ・ルーと並んで「レゾナンス組」ではルリグ化の機会に恵まれなかったソウイも、メモリーシグニ《蒼将 ソウイ//メモリア》となり、優秀な手札交換役としてお呼びがかかるケースもあった。
また、「デッキの上から5枚見て3枚加える」ライフバーストを持つレベル2のバニラシグニが各色に登場。特に赤の《紅将 トリスタン》は2024年に【花代爾転】で、緑の《翠天 ハヌマーン》は《トリスタン》と合わせて2025年に【1止めGONG】などで採用され、メタゲームの変遷と共に評価された。
アシストルリグは花代や緑子に加え、前弾のきゅるきゅる~ん☆からまほまほ、ゆかゆかが1種ずつ登場。特に《ゆかゆか☆どじゃーん》は非常に使い勝手の良い1面防御であり、レベル1の《ゆかゆか☆ぽーん》とセットで採用されることが徐々に増え始めた。



そして何より、コレクション要素がより強まった弾である。
カードのレアリティが見直され、センタールリグには「ウルトラレア(UR)」「ルリグレアパラレル(LRP)」が登場。ボックスも20パック入りから14パック入りとなり、1ボックスに1枚、ルリグレア(LR)が必ず封入されることになった。これまでのレベル3センタールリグを光らせるには、封入率が非常に低いディーヴァレア(DiR)しか選択肢がなかったため、この弾以降、レベル3センタールリグを光らせる難易度が大きく下がった。単に光らせるだけであればLRでもよいが、URは虹色立体箔仕様というだけあって、センタールリグのファンにはたまらないものとなった。
ただこの弾のURは、生産工程の誤りで虹色加工に印刷の不備が発生。元来の虹色加工が施されず、黒塗りのままになってしまった。タカラトミーのお客様相談室に連絡することで交換対応を受けられるが、黒塗りの虹色加工もそれはそれで貴重なので、両方持つファンもいるとかいないとか。
この弾には新規で登場したピルルク、ユヅキ、ウリスに加え、ストラクチャーデッキに収録されたタマのUR、LRPが収録。前弾に引き続き、ディーヴァ組からレイ、LOVIT、バン、サンガも、新規センタールリグが登場している。ディーヴァ組のセンタールリグゆえ「No Limit」などのチームに所属しているが、チームに関する能力を持たないため、チームピースだけでなくドリームチームピースを使った構築も可能。特にレイやLOVITには熱心なファンもおり、様々なデッキが意欲的に開拓され、本サイトでも貴重な資料となっている。



SRの中には「SRP」も登場。加工のみを見ると、オールスターやキーセレクションにおける「シークレットレア」に該当するポジションだが、封入率が非常に低いため、メインデッキのレアリティ向上は難しくなった。また、ルリグがシグニとなった「メモリーシグニ」では、SRP版はイラストが変わり、ルリグそのもののサインが描かれるとあって、そもそもの封入率の低さから、中古価格は非常に高騰した。
そして最大の目玉として「シリアルナンバー入りのルリグ」が登場。初回生産のみにごくまれに封入されるレベル0で、その枚数は7周年にかけて、各ルリグにつき7枚のみ。ルリグのキャラクター人気にもよるが、ピルルクやタマはシリアルルリグそのものが初回だったこともあり、相場感がわからないことから、とんでもない値段で取引されているそうだ。

コレクション要素の強化の背景の一つには、他タイトルTCGの高額化があるとされる。この頃はポケモンカードや遊戯王を投資目的で購入する層が増え、非プレイヤーも中古TCG市場に参入し始めた。「ポケカ投資」が本格化し始めたのは2021年上旬とされ、コロナ禍における手軽な投資・転売ツールとして、トレカにスポットライトが当たって「しまった」のだ。
カードそのものに価値が付くことはよいが、転売や予約戦争などの負の側面の方が目立ってしまい、コロナ禍がある程度落ち着いた昨今でも、タイトルによっては投機の対象になってしまっている。カードショップを狙った強盗事件やオリパをめぐるトラブル、組織的な転売などは絶えず発生しており、販売元も対策に追われているが、改善の余地は見えていないのが現状だ。
また、TCGプレイヤーの高年齢化による可処分所得の増大や、「推し活」としての熱量などもあってか、決して安くない金銭を投下するプレイヤーも増えている。シリアルナンバー入りのルリグは2026年8月現在も継続されており、好きなルリグが収録される弾を爆買いするプレイヤーも少なくない。人生があってこその趣味なのか、趣味の間に人生があるのかは人それぞれではあるが、加速度的に値上がりする高額カードと、フルレアリティの入賞デッキを同時に見ると、お財布事情が気になってしまうこともあったりなかったりする。あっ、ショーケースお願いします。
