第3章~おかえり、セレクター

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3:「ダッシュ」の恐怖を思い出せ!

その傾向は変わらぬまま、8弾「SPREAD DIVA」が2022年2月26日に発売された。
センタールリグにエルドラ、アン、イオナ、ゆかゆかが登場。4ルリグともカードパワーが低く、メタゲームには大きな影響を与えなかった。ルリグレアピースの評価もあまり高くなく、ルリグの色による構築ルールのため、「3モードあるのに2モードしか選べない」という点が足を引っ張り、さほど見向きもされなかった。が、この評価は後に大きく変わることとなる。

タカラトミー公式サイトから

8弾はセンタールリグよりも、コモンやレアで注目されたカードが揃っている。

《オーバー・パシュート》《聖英 タンゴカード》の2枚は、「白単」系デッキの序盤火力として活躍。この弾のセンタールリグの評価は低いと評したが、白の《ゆかゆか☆さ~ん》が一部のプレイヤーの手によって開発され、ウィクロスセレモニーで【白単ゆかゆか】として活躍。この活躍を機に、アシストルリグも白で統一する「白単」系のデッキが、徐々に存在感を発揮し始めた。

既に《コードメイス ルヴダビ》など優秀な白のシグニが揃っていたこともあり、《ゆかゆか☆さ~ん》以上に優秀なセンタールリグでの開拓が急激に進行。最終的に《明日へ前進 アキノ》の【白単アキノ】に白羽の矢が立ち、白単の代名詞的存在となっていった。
《コードハート リメンバ//メモリア》を自然に採用できることはもちろん、白シグニのパワーラインの高さや【シャドウ】などもあり、デウスやエクスたちに強気に出られることが、このメタゲームにおいて何よりの武器だった。「白単」の存在感はどんどん大きくなり、環境で徐々に無視できないものとなっていく。

そしてこの弾でもう一つ花開いたデッキが【ダッシュヒラナ】だ。センタールリグは《頂点へ一歩 ヒラナ》。アシストルリグに《タマ・おーら》、もう1人に《みこみこ☆ずばしゃーん》などを採用し、《一覇一絡》や自身のゲーム1能力で強化したルリグアタックを叩き込むデッキだ。

武器は最速で先攻3ターン目でゲームエンドが狙える火力と、その再現性の高さ。ライフバーストやドローなどに左右されることはあれど、ショットの成功率はなかなかに高く、ダッシュ系のデッキにしては高いアベレージを持つデッキだった。ディーセレでは生まれるはずがなかったこのショットデッキを前に、往年のプレイヤーはオールスターの【2止めウムル】や【2止めユヅキ】など、かつての恐怖をまざまざと思い出したという。

22/04/04 バトロコ川崎駅前店4位 あきつか選手(大会結果ページへ

白単系に加え【ダッシュヒラナ】も登場し、デウスたちを中心にしていたメタゲームは徐々に混沌としていく。その流れは22年4月29日に発売された9弾「CONFLATED DIVA」でも続いた。

タカラトミー公式サイトから

カーニバル、レイラ、メル、ママ、ナナシ、グズ子の6人がセンタールリグとして登場したこの弾。全員がコインを持っていたが、センタールリグの性能はメタゲームに影響を与えるものではなかった。メルの【アクセ】やナナシの【ウィルス】など、オールスターのギミックを再現した能力こそあったが、再度性が高いだけで、決して強力とは言い難い。むしろオールスターやキーセレクションに与えた影響の方が大きく、《メル=チアーズ》はレベル4《メル=ミントビア》と合わせて2ターンの間相手の起動能力を封じられることから評価を一気に押し上げたり、《ナナシ 其ノ参ノ踊》はキーセレクションで【原子ナナシ】の構築を後押しすることとなった。グズ子やカーニバルもオールスターでは良い立ち位置のルリグで、それらもまた優秀なレベル3ルリグを手にした形だ。

ディーセレの話に戻ろう。9弾のピースの評価も8弾同様、現時点では高くなかった。直後に活躍する《宇宙級母性》や、後に【防衛派】で輝く《カウントダウン・ヒールズ》が収録されたが、当時のメタゲームを激変するものではなかった。デウスやエクスたちは変わらず《ゼノ・クラスタ》《M.G.D》などを使っていたし、白単系はドリームチームピースではなく《ホワイトヘヴン》などを採用。ここまででピースの枚数が増えた割には、実戦級で活躍するものは少ない状況が続いた。

ルリグデッキが芳しくない一方、メインデッキの強化は顕著だった。
画期的な1枚が《轟炎 フレイスロ団長》だ。

6枚の手札という非常に重いコストこそかかるが、ライフクロスをメインデッキでクラッシュできる強烈な1枚。一見重いコストも《SONG OF WIXOSS》などですんなり達成でき、手札を投げ捨てた後のガス欠は、ゲームが終わってしまえば問題なし。そんなロマンあふれる1枚は、多くのショットファンの心に火をつけ、あらゆる赤デッキ……、時には赤デッキの枠を超えて、引導火力として暴れ始めた。


特にこのカードの登場で、【ダッシュヒラナ】は押しも押されぬトップデッキの一角となっていく。前弾で登場していた《大装 ハルバード》でアシストルリグやライフバーストでもショットが止まりづらくなっていたこともあって、ショットの安定感がさらに向上している。

22/06/26 チャレンジャー優勝 ちんすこう選手(大会結果ページへ

また黒ルリグにとっては《羅菌 オイゴナ》が最高の強化だった。

simple is best

「黒のカードを1枚捨てればマイナス3000」というシンプルな出現時能力だが、当時としては貴重かつ高水準なメインデッキの除去カードのため、あらゆる黒デッキがこぞって採用。トップメタの【原子デウス】にとっても、序盤の除去役はレベル1の《羅原 Pb》こそいたが、それよりコスパ良く除去できるという点が魅力で、当然のように採用された。前弾の《羅星 ベレニケ》の登場もあって黒デッキの足回りも着実に強化されながら、プレイヤーの手でデッキの最適化がどんどん進み、特に【原子デウス】は円熟期を迎えることになる。

他にも《サーバント #》を回収できる《聖魔姫 オロチマル》や、手札・エナ破壊メタの《翠美姫 コンテンポラ》、コインデッキの火力を押し上げた《紅将姫 リル//メモリア》など、デッキの軸にはならずとも、よき潤滑油となれるカードが登場。また《コードハート ピルルクAPEX//メモリア》《幻竜姫 真・遊月//メモリア》は能力を持ったシグニでは初の2色シグニで、後にセンタールリグとして【ピルルクAPEX】【真遊月】が登場した際は、改めて注目されるようになった。

さて、9弾告知の際は「過去に登場した全てのルリグがディーヴァセレクションに集結する」というアナウンスがされた。ついぞ全てのルリグが揃わなかったどころか、青のタマ、緑のピルルクという、同じルリグタイプが色違いで登場したキーセレクションからは大きな変化であり、「順番待ち」のルリグとプレイヤーたちも、ひとまずは胸をなでおろしたはずだ。
オールスターやキーセレクションの観点から見ても、「能力を持った新規のレベル3ルリグが1枚もらえる」という確約がされた点で大きい。6弾以降は先ほどの【メル】をはじめ、【ウリス】【遊月】など、レベル3ルリグの新登場でブラッシュアップされたデッキも少なくない。メインデッキを見ても、緑白のバニラシグニである《聖翠美 オリガミ》を得た【アン】など、ディーセレ弾とはいえ、オールスター、キーセレクションへの影響が大きかったものだ。
オールスター、キーセレクションへの直接的な強化、例えば新規のレベル4ルリグやシグニなどは登場せずとも、パワーの高いレベル3シグニや、コインを得られるアシストルリグなど、オールスター、キーセレクションに小さくない影響を与えている。「アーツ・キーとアシストルリグ」という全く異なるゲーム体験もあって、オールスターやキーセレクションに注力するプレイヤーも少なくはなく、このフォーマットでは彼らの手によって次々と新しいアーキタイプが生まれていることも書き添えておこう。

この頃の社会情勢に目を向けると、22年3月を最後に「まん延防止等重点措置(まん防)」が終了。段階的に経済活動の再開を探り始めた時期で、プレイヤー間のアクリルパネルが少しずつ取り払われつつあった。discordを活用した「エアウィクロス」は落ち着き始めたが、場所、時間を問わずに対戦ができるツールとして、その後も活用され続けている。

フォーマットの転換期という、デリケートかつ大切な時期にコロナ禍が重なり、大きな打撃を受けたウィクロスとディーヴァセレクション。当時のユーザー離れは深刻で、WIXOSSBOXのアクセス数を見ても、1日辺り3000や5000だったコロナ前から、1日辺り数百、時には数十に落ち込んだことからも、その打撃は非常に大きかったと推測される。特に、大会やイベントの開催ができなかったことが深刻で、新商品のプロモーションや、新フォーマットの体験の場が設けられないのは致命的だっただろう。
だが、タマやピルルクといった往年のルリグたちの投入や、今後の展開のアナウンスなどもあって、ウィクロスは徐々に立て直し、かつてほどではなくとも活気を取り戻し始めたのは確かだ。ウィクロスパーティーやセレモニー、大型イベント「ディーヴァグランプリ」の開催はもちろん、2021年8月に始まった、ユーザーの手によるイベントをサポートする制度「白窓の部屋」もそれを後押しした。商品の内容を見ても、URやSRP、シリアルルリグなどの登場もあり、特に既存プレイヤーや復帰プレイヤーにとっては、購買意欲がより高まっていった印象だ。

ただメタゲームは、デウス、特に【原子デウス】の天下が1年近く続いており、《H2O》の猛威は強烈だった。【白単】や【ダッシュヒラナ】、【青白あや】などの新顔こそいたが、【原子デウス】【チームデウス】【エクス】が長く天下を取っており、6弾から9弾の4弾にわたって登場した多くのセンタールリグは、皆デウスとデウスとデウスに屈してしまったのが事実だ。

しかし、諸行無常が世の常である。プリズマティックな鐘の音と共に、トップメタの交代が、間もなく告げられることとなる。
さあ、共宴の時はすぐそこに――。

COMING SOON…(2026.09)