ウィクロスセレモニーin川崎・カバレージ(決勝)

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08/11 ホビーステーション川崎店
WIXOSS TEAM BATTLE 絆 決勝

決勝戦のオールスター担当を務めるのは、スリー選手とウルシハ選手だ。
両者とも現在のトーナメントシーンで、何度も優勝・入賞を繰り返している、名実ともにトッププレイヤー。決勝の舞台に辰にふさわしい両名、といったところだろう。

ただ、どうも雰囲気がおかしい。言うならば「静か」だ。
隣のキーセレクションに立つ両チームの4名は、なにやらリラックスムードだが・・・。もともと寡黙な2人だが、いつも以上に静かというか・・・。

何はともあれ、試合開始だ。

スリー選手(ナナシ)VSウルシハ選手(アルフォウ)

(この並びいいですよね)

先攻はスリー選手。ルリグは「ナナシ」だ。
レベル1へグロウし、<ナナシキー>を展開。デッキトップから4枚をめくるが・・・、該当する黒いカードは、なんと<ハショフ>1枚のみ。何とも幸先の悪い立ち上がりに、普通なら悲鳴のひとつでもあげたいところだが、スリー選手は表情一つ変えない。しかもトラッシュに落ちたカードは、デッキの回転に必要な<THREE OUT>などのドロースペルだ。
<マイプラ><クロコウジ>を立てて、ターンを返した。


(ここでのナナシキーは<鍵ノ型>。同名ルリグのキーが複数種類あると管理が大変です)

後攻のウルシハ選手がオープンしていたルリグは、なんと「アルフォウ」だ。
数々のルリグを使いこなし、そのほとんどで実績を積み重ねてきた彼だが、その中に「アルフォウ」はあったか・・・。瞬間の思考の間に、彼は素早く手を動かしていた。
エナチャージからグロウ。<ママハハ>で落とし、混じっていた<テキサハンマ>を蘇生させ、<フルフル>を発動。<テキサ>に<選択する物語>を当ててドローし、<サユラギ>を出現。<マイプラ>を焼いてアタックだ。
対するスリー選手は<ナナシキー>を破棄。トラッシュに落ちていた<マイプラ>を蘇生させ、手札から<ポレン>を投げウイルスをばら撒く。そして<サユラギ>を焼き、防御を終えた。
ルリグアタックが通り、さらにトラッシュが増えてターンエンド。ここまでおよそ1分だ。6−7。


(ナナシの序盤の要。メインフェイズで除去できなければ、悲惨な目に遭う)

速い速いと焦る筆者を尻目に、スリー選手はギアを上げる。
レベル2へグロウ。<RS><クロコウジ>を場に出し、さらに<黒点タマキー>を発動。アタックフェイズへ入った。
ウルシハ選手はそれらを受け、ライフは4へ落ち込む。指と頭が追いつかない音速のプレー。お互いの脳内には、自分がどのカードで何をされて、どうなるかというところまで、すべて入っているのだろう。6−4。

ウルシハ選手も2へグロウ。<インサイダー・サルベージ>で<ゴージアウト>を拾うと、<ゴージアウト><ママハハ>を出現。<ママハハ>の3枚落としで<マイプラ>を溶かすと、2面でアタックフェイズへ入った。
まずは<ゴージアウト>のアタックで<サユラギ>が蘇生され、面が溶けて1点。<ママハハ>のランサーでさらに1点、<サユラギの>アタックと同時に、両者リフレッシュ。サユラギとリフダメで、合わせて2点。ルリグはガード。2ー3。

リフレッシュ前に、お互いがお互いのトラッシュをじっくりと確認する。
とにかくプレーが速い。速すぎる。筆者もトラッシュ確認の間に、お互いの状況やライフクロスを確認する。「きちんと取れていない部分が多い気がするけど、とりあえず記録・・・!」と呼吸を整える。


(アルフォウ限定のSRシグニ。<シゴト>を採用すれば、リミット制限さえメリットに)

ターン終了。スリー選手のナナシがレベル3へグロウした。
まずは<THREE OUT>を2連発。トラッシュに<メイジ>を送りつつ、<RS><ノロウス>と展開した。<ノロウス>が<サユラギ>を溶かし、スリー選手はアタックフェイズへ。要求は<RS>の1点のみだ。
ウルシハ選手はスリー選手のデッキ枚数を確認する。「15枚」の返事に、<パープル・スプラッシュ>で答えた。デッキを落とし、<ゴージアウト>との組み合わせで、<ノロウス>を溶かしつつ<テキサハンマ>も蘇生させる。このターンのライフ変動は発生せずだ。2ー3。

ウルシハ選手は手を止めない。<ママハハ>に<選択する物語>を当て、再びの<ママハハ>。<ママハハ>に呼応した<ゴージアウト>が<RS>を溶かし、<インサイダー・サルベージ>で手札補充。もう一度<ママハハ>を投げると、スリー選手は再びリフレッシュだ。ライフはもう1枚。
<ママハハ>はまだバニッシュ耐性を持っていないように見える。ウルシハ選手はトラッシュの枚数を入念に数えながら、<物語>でママハハを飛ばすと、<リンゼ>を配置し、アタックフェイズへ。<ママハハ>にバニッシュ耐性がないことが、両者のやりとりから伝わった。


(小型<メツミ>かつランサーを持つ、アルフォウの新たな潤滑油。バニッシュ耐性を持つ条件は非常に厳しい)

とはいえパワーは8000。スリー選手はしばし考え、<クトゥル・アビス>で要求に答えた。
暴れ尽くした<ゴージアウト>をトラッシュに送り、<ママハハ>の前に<ノロウス>を呼ぶ。そして<リンゼ>を<黒点タマキー>のエクシードで消し、ルリグアタックを<アビス>で止めると、このターンの要求は0に抑えた。1ー3。

とうとうナナシがレベル4へグロウする。
ここでスリー選手が手を止めた。<ボツリヌス>を出したが、「あー、だったら、えーっと・・・」とぼやきながら、手札のカードを裏向きでシグニゾーンに置いて、引っ込めてを繰り返している。試合を見ていると、スリー選手のみならずウルシハ選手もこの仕草をしながら、手順を考えることが多いようだ。入念に考え、最適解を見つけ、攻める。「何となくのプレイ」を一切配した、丁寧なウィクロス。強者たる所以を垣間見た。
思考の結果、ルリグ効果を発動。「配置禁止で」と短く伝え、<ポレン><コレラ>を立ててアタックフェイズに入った。ナナシの強さの多くを担う、ルリグ効果による「シグニの再配置不可」がウルシハ選手を縛る。蘇生に頼りがちな黒ルリグには、かの<ヘルボロス>同様、強烈に刺さる効果だ。
とはいえ、ウルシハ選手は落ち着いた様子で<ダーク・コグネイト>を発動。<ポレン><コレラ>の2枚をバニッシュし、ルリグアタックのみを受けた。1−2。


(「シャドウ」と貯菌バラマキが強力なシグニ。こんなに強くなるとは)

<ボツリヌス>への対抗手段が、アルフォウの中にあるのか。
「シャドウ」でほとんどの効果を受けず、貯菌でパワーマイナスを振り続ける厄介なシグニ。アルフォウのみならず、彼女への対抗手段を持つデッキは多くはない。
<マイプラ>による速攻と、<ボツリヌス>でのコントロール。加えて4ナナシの配置不可。序盤、中盤、終盤ともに隙の少ないウイルスマスターが、アルフォウ率いる幼子たちに容赦無く襲いかかる。
ウルシハ選手はエナゾーンや場を入念に確認しながら、最適解を求めている。ナナシ側のルリグデッキの防御を多く吐かせているため、勝ち筋はまだ残っているようだ。表情は見えないが、意を決したようにメインフェイズでルリグデッキに手をかけた。

「<フラクタル・ゲージ>で<ボツリヌス>を消して、<ブルー・サジェスト>でエクシードを抜きます」

一気に2枚のアーツを発動。スリー選手の場がガラ空きになり、<黒点キー>のエクシード防御も奪われた。攻め時は今だと言わんばかりに、ウルシハ選手は残るシグニゾーンを<リンゼ>で埋め、アタックフェイズへ。
間髪入れず、スリー選手は<炎のタマ>で対抗。しかし<リンゼ>のアタックが通り、スリー選手のターンでのスペルやアーツを封じた。0ー2。


(スペルやアーツを多用する相手には痛烈に刺さるシグニ)

全面にウイルスを配置したといはいえ、スペルが使えないのは厳しいか。スリー選手は「どうしたらいいんだろう」と頭を抱えながら、<ボツリヌス>を再度呼び出した。
迷いながらも<RS>を起動させ、<リンゼ>をバニッシュしつつ、手札とデッキを削る。ここでウルシハ選手がリフレッシュに入り、ライフクロスがさらに落ち込んだ。スリー選手はさらに<ハショフ>を場に出し、パワーが2000になった<ママハハ>を除去。ルリグ効果で配置禁止を宣言し、<ボツリヌス>の起動効果で最後の<リンゼ>を飛ばすと、<RS>を<サーバント>に張り替え、アタックフェイズへ入った。

「残りのデッキ枚数は?」とウルシハ選手が聞く。20枚との答えに、「20枚、20枚ね」と繰り返した。
エナは白3黒3。<ステアード・サルベージ>で<パープル・スプラッシュ>を発動し、<サーバント>を溶かし、お互いのデッキを削った。
ウルシハ選手の6枚からは<テキサハンマ>が現れる。ウイルスのない場所に<テキサ>を置き、<ハショフ>のアタックを受ける。ルリグアタックはガードし、ターンを迎えた。0−1。

デッキの枚数を吟味しながら、「デッキ枚数足りる?」と、数字との戦いを始めた。
「デッキがこうなって、ここをこうして、落として、3面しなきゃダメ?」と詰めていく。手札はサーバント、<デス・ブロッサム><ママハハ>の3枚。「いやダメか?デッキ枚数足らない?」と、勝ち筋を見出そうとする。
対するスリー選手は不安げだ。何をされるのかわからないからなのか、ウルシハ選手なら何かしてくるという確信からなのか。隣のキーセレクションが1勝1敗となり、勝敗はオールスター、つまりこの2人に委ねられた。

ウルシハ選手は手札からサーバントをチャージ。
そしてまた、右手でシグニゾーンを撫でながら、「足りない・・・!」と、何度も繰り返している言葉を漏らした。

「足りないですね」

ウルシハ選手は両手をあげ、すっとデッキと畳んだ。
トラッシュを30枚に肥やし、バニッシュ耐性を持った<ママハハ>3面は、達成されることはなかった。

WIN スリー選手

〜おまけ〜
ウルシハ選手にアルフォウを選んだ理由を聞いた。
環境トップであるカーニバルに有利を取れ、同じくあやも、相手のアーツの発動順によっては有利に立ち回れることからだという。
対あやでは、相手がトラップとレベル5のコイン防御のみを残した状況になると、<フラクタル>、<スピサル><フラクタル>、<ステサル><スピサル><フラクタル>による、「3面フラクタル」で詰め切れる、という。必要エナ数は多いが、明確な詰め手段を要した構築に仕上げたようだ。
ただ、「ナナシは見ての通りですね」と、苦しい表情で応じた。試合にもあった通り、<フラクタル>などをメインフェイズで撃つ関係上、<炎のタマ>が直撃し、1ターン飛ばされてしまうことが理由だ。再配置禁止や<ハショフ>なども絡むと、非常に厳しいマッチアップのようだ。


(「シグニゾーンを消す」という最高峰の除去アーツ。<ボツリ>への数少ない対抗手段だ)

勝利を掴み取ったスリー選手だったが、最後まで元気がなかった。
そういう性格だとは知っているが、全ての試合を終え、優勝賞品を受け取っても、どこか表情は暗い。暗いというか、疲れ切っているというか、何というか。「もっと盛り上げてよー」と軽く声をかけてみたが、しかしそれにしても珍しく落ち込んでいる。スリー選手ほどの猛者でも、ここまで連戦すると、疲れ切るものなのだろう。そういうものだと納得し、会場を後にした。

居酒屋でウィクロス仲間と談笑している中で、その理由はわかった。
4位に入賞したゆー選手(エルドラ)が、「準決勝のスリーさんとの試合で・・・」と切り出した。

「ライフ0で<アビス>使われて、<デメニギス>の前に<ボツリ>立てられたんですよ。で、<デメニギス>で殴ったら、ノールックで<ノイヴァン>が・・・」


(相手の全てのルリグとシグニの能力を消すライフバーストを持つ。シャドウも消えます)

心のうちは、誰にもわからないものだ。