1:コロナ禍の中で
「ディーヴァセレクション」というフォーマットが初めて発表されたのは、2020年7月に開催された「エアウィクロス未来博」でのことだ。早速カードゲームから脱線するが、当時の社会情勢を書き記さないわけにはいかない。人類は未曾有のパンデミックの最中にあったのだ。

同年2月ごろ。新型コロナウイルスが世界中で猛威を振るい始め、世の中の姿は一変した。人々の接触は感染の原因とされ、海外では外出禁止令や「ステイホーム」など、移動や交流が制限され始めた。
日本も同年3月ごろから感染が徐々に拡大。緊急事態宣言が発令され、不要不急の外出・イベントの開催の自粛が求められた。新聞やテレビでは新規感染者数が毎日発表され、在宅勤務が推奨されるように。渋谷や新宿などの大都市は閑散とし、日本もまた、未知のウイルスとの戦いを余儀なくされていた。
当然、カードゲームというエンターテインメントも甚大な影響を受けた。
カードゲームは言わずもがな、人と人とが顔を合わせ、コミュニケーションを取りながら遊ぶツールだ。飛沫感染のリスクが高いと懸念される「密」になる行為であり、従来通りに遊ぶことは難しくなっていった。「午後8時以降の店舗の営業自粛」という社会情勢もあって、カードショップのデュエルスペースは軒並み閉鎖。「友人や仲間と集まり、カードゲームで遊ぶ」という、当たり前とされていた営みの自粛を余儀なくされた。
「これは一時的なものだろう」と楽観的に捉える声もあった。しかし、感染者数は減少するどころか拡大するばかり。最終的に緊急事態宣言は21年9月末まで4回発令され、その後は22年3月末まで「まん延防止等重点措置(まん防)」が実施。日本は約2年近くの間、何らかの制約のもとに社会生活を営んでいた。
カードショップのデュエルスペースは閉鎖され、緊急事態宣言が発令されていない間は利用できていたが、アクリルパネルをテーブルの中央に立て、飛沫が飛び交わないような対策が施されていた。コロナ禍前のような過密空間は無くなり、新型コロナウイルスの感染症法の位置づけが2類から5類になった23年5月以降も、その形跡が残るデュエルスペースもある。

そんなコロナ禍の最中で生み出されたカードゲームの対戦方法が「オンライン対戦」だ。
机の上に置いたカメラで盤面を写し、「discord」などのビデオ通話ツールを使って対戦する。コロナ禍前は遠方の仲間との対戦として使われていたようだが、対面せず、飛沫感染を防ぐ対戦手段として、コロナ禍で幅広いタイトルで定着。ウィクロスでは「エアウィクロス」という名称で親しまれた。仲間内でdiscordサーバーを立てる例も多かったが、「ウィクロス集会所」のように、半ば公的なプラットフォームとして発展したサーバーもあった。
対戦相手のカードを手に取って確認できなかったり、通信状況や画質・音声の優劣もあったりと、カードショップで対面するよりも不自由な環境ではあった。それでも、未知のウイルスと社会情勢が飛び交う中、いつもの仲間といつものウィクロスで遊べる「エアウィクロス」は、まさにオアシスだったと言えるだろう。
ユーザーだけでなくカードゲーム開発側も、オンラインでの対戦を推奨したり、カードショップを交えてサーバーを提供しイベントを開催するなど、不自由な中でもカードゲームの火を絶やさぬよう、数多の工夫と努力を重ねていた。
ウィクロスは20年3月、第4回目となる世界大会を控えていたが、この情勢を受けて中止に。7月のユーザー参加型イベント「ウィクロス未来博」もリアルでの開催が断念された。しかし「ウィクロス未来博」は「エアウィクロス未来博」と名を変え、discordサーバーとYoutubeでの配信で、最新情報の発表やバトルラッシュを実施。そこで「ディーヴァセレクション」とアニメ新シリーズ「WIXOSS DIVE (A) LIVE」の初回発表が行われたのだった。
構築済みデッキの発売時期が12月と発表され、それまでに新商品のリリースがないこともアナウンスされた。コロナ禍で対面での勤務が難しい中で、新アニメと新カードを同時並行に開発するために、半年という時間が必要だったのだ。

エアウィクロス未来博後の8・9月にも、ディーヴァセレクションに関する番組が配信。
ピース、アシストルリグの導入、カードデザインの変更、ルリグやシグニの最大レベルが3へ下がる、限定条件の廃止、シグニのパワーラインの見直しなど、ディーヴァセレクションの詳細なシステムが発表された。

さまざまな変更があったが、特にピース・アシストルリグのシステムは、驚きとともに受け止められていた。長年親しまれていた「アーツ」「キー」という防御システムが事実上廃止され、全く新しいギミックとなったことへの反響だ。「対戦時間を短く・シンプルに」という言葉の背景には、例えばオールスターでの《羅原 Zr》を筆頭とした「アーツ外防御」によるゲーム時間の長期化があったと推測される。
ディーヴァセレクションの全容は、後日「アンシェント・サプライズ(アンサプ)」「にじさんじ・さんばか」の構築済みデッキのラインナップが発表されたことで明らかになる。
圧倒的に少ない防御手段、ライフバーストがゲームに与える影響の大きさ、ガード手段が《サーバント #》1種4枚しかない、全く新しいウィクロス。ディーヴァセレクションの構築済みデッキのカードリストを前に、ウィクロスのかつてない変化を受け止めていた。